カタログに記載されている推奨切削条件は,実際の加工工程にとっては妥当な加工条件ではない場合があります.
ということは私自身も理解しています.
この計算機能の真の目的は,カタログ推奨切削条件の推定ではありません.
真の目的は,推奨切削条件において重要な項目が何なのかを調べることです.
私の仮説は,カタログに記載されている刃先交換チップの形状は,それ自身の性能を示している,というものです.
よって,この計算機能は,刃先交換チップの形状と,推奨切削条件の関係性を調査するために作られました.
カタログを参照して494組の推奨切削条件を刃先交換チップの形状情報とともに収集しました.
ここで述べている刃先交換チップの形状情報というのは以下のとおりです.
- アプローチ角
- チップ厚み
- 内接円
- 最大軸方向切込み深さ
- コーナ数
- 片面,両面
- 縦型,円形
すくい角,inclination angle,刃先処理,チップ材質も重要ですが,これらは測定が難しく,カタログにも載っていないので省きました.
分類に使った被削材は以下のとおりです.
- (P)軟鋼: 0-180HB
- (P)一般鋼: 180-350HB
- (P)合金鋼: 0-350HB
- (P)金型鋼: 200-220HB
- (M)ステンレス
- (K)鋳鉄: 0-350MPa
- (K)ダクタイル鋳鉄: 0-800MPa
- (N)アルミニウム合金
- (S)耐熱合金
- (H)高硬度鋼:HRC40-60
上記項目から断面二次モーメント,最大応力,難削指数などの変数を作成しています.
また,これらの二乗,平方根,逆数なども作成しています.
それらの変数に対して重回帰分析を適用しました.
現段階では,以下の結果が得られています.
- 切削速度は被削材に依存し,刃先交換チップの形状は無関係.
- 1刃当たりの送り量は主としてアプローチ角に依存し,局所的な変化は被削材に依存する.
よって,推奨切削条件は以下の変数から推定されています.
- 切削速度:被削材
- 1刃当たりの送り量:アプローチ角,被削材
各図において,
青線は推定結果の最大値,
緑線は推定結果の中間値,
赤線は推定結果の最小値,
黒線はカタログに記載されていた値を示します.

図 切削速度の推奨値と推定値

図 切削速度の推奨値と推定値(拡大図)

図 1刃当たりの送り量の推奨値と推定値

図 1刃当たりの送り量の推奨値と推定値(拡大図)
推定精度がいまいちよくないので,今後も調査を継続する予定です.
カタログ推奨切削条件が知りたい場合は,この計算機能を使うより,カタログを確認したほうがいいです.
この計算機能による推定結果は参考にはなるかもしれませんが,信用してはいけません.
もし推定結果を試用される場合は,低切削速度かつ低送りの条件から加工を始めてください.