最終更新日:2021年07月13日

TOPページ

フライス加工用の
切削計算アプリ
「ミリングマニアック」の「切削条件」計算機能説明

目的:計算に手間がかかる切削条件計算の簡便化

内容:以下の数式を組み合わせて互いの数値を計算しています.
\( V_{c} = D \pi S \)
\( V_{f} = f_{z} S Z \)
\( M_{RR} = a_{p} a_{e} V_{f} = a_{p} a_{e} f_{z} S Z \)

\( M_{RR} \):材料除去能率(=加工能率)
\( V_{c} \):切削速度
\( V_{f} \):送り速度
\( a_{p} \):軸方向切込み量
\( a_{e} \):半径方向切込み量
\( f_{z} \):一刃あたりの送り量
\( Z \):刃数
\( D \):工具径
\( S \):回転数

追加情報:
上式を組み合わせて式変形をすると以下の式が得られます.
\(\displaystyle M_{RR} = \cfrac{ a_{p} a_{e} f_{z} V_{c}}{ \pi } \cfrac{Z}{D} \)
上式右辺第一項は,円周率を除けば,切削条件のみを表しています.
たいして,上式右辺第二項は,「工具径に対する刃数の密度」を示しており,これは工具の設計値に起因します.
これは,切削条件を一定にしたまま,同一工具径で刃数を多くすれば,加工能率は上がる,という当たり前のことを示しています.
しかし,別な見方をすれば,工具径が変わっても刃数の密度さえ大きくなれば加工能率が上がるというように解釈することもできます.
つまり,例えば,Φ100のカッタで10枚刃であるよりも,Φ25のカッタで3枚刃であるほうが,同一切削条件下において加工能率を高めることができます.
下図に,市販されている特定のカッタにおける,工具径と刃数,ならびに刃数/工具径(=Z/D)を計算した結果を示します.

工具径と刃数の相関関係

このような逆転現象は,特に工具径がΦ32以下程度の小径側に移ると発生しやすいです.
上図でも,刃数/工具径はΦ32で極大値を持っています.
ただし,工具径が小さくなると,カッタ剛性が低くなるために突き出し量を小さくしたりする工夫が必要になります.
ここで,一刃あたりの加工能率\( M_{RRPE} \)の計算式を立てると下式が得られます.

\(\displaystyle M_{RRPE} = \cfrac{ M_{RR} }{ Z } = \cfrac{ a_{p} a_{e} f_{z} V_{c}}{ \pi } \cfrac{1}{D} \)

上式より,工具径を小さくして加工能率を高める戦略を取ると,一刃あたりの加工能率を上げていることになることがわかります.
これは,単位時間あたりでの刃先での仕事量が増えていることを示すため,工具刃先の温度が上昇しやすくなることを示しています.
次に,工具一回転にかかる時間\( T_{rot} \)を求めると,下式が得られます.

\(\displaystyle T_{rot} = \cfrac{60}{ S } = \cfrac{60 \pi D}{ V_{c} } \)

上式より,工具径を小さくして加工能率を高める戦略を取ると,工具一回転にかかる時間が短くなることがわかります.
つまり,一つの刃先に着目すると,材料除去を一度実施してから,材料に再度切り込むまでの時間も短くなります.
この時間は,本来,刃先を空冷する時間にあたるため,放熱可能な熱量が減ります.
よって,工具径を小さくして加工能率を高める戦略では,発熱が増えて,放熱が減るため,刃先温度が上がりやすいという問題があります.
この戦略を取る場合,剛性と温度に気を付けて下さい.