内容:カッタボディのR.R.とA.R.は,そのカッタの特徴を示す指標の1つであり,以下のように分類されます.
- ポジポジ刃形:R.R.,A.R.ともに正の値
- ネガポジ刃形:R.R.が負で,A.R.が正
- ポジネガ刃形:R.R.が正で,A.R.が負
- ネガネガ刃形:R.R.,A.R.ともに負の値
これらの組み合わせに何の意味があるかという疑問に対しては,以下の式によって,各々の特徴を説明することができます.
\( \tan \left( \theta _ {T.R.} \right) = \tan \left( \theta _ {A.R.} \right) \times \sin \left( \theta _ {A.A.} \right) + \tan \left( \theta _ {R.R.} \right) \times \cos \left( \theta _ {A.A.} \right) \)
\( \tan \left( \theta _ {I.A.} \right) = \tan \left( \theta _ {A.R.} \right) \times \cos \left( \theta _ {A.A.} \right) - \tan \left( \theta _ {R.R.} \right) \times \sin \left( \theta _ {A.A.} \right) \)
上式は,切削工具メーカのカタログにも記載されています.
上式によって,R.R.とA.R.から,T.R.とI.A.を得ることができます.
T.R.が正に大きいほど,切れ味が鋭くなるので,切削抵抗が小さくなります
I.A.が正に大きいほど,切りくず形状に関与する切りくず流出角が大きくなるので,切りくず排出性が高くなります.
上式をよくよくみると,各刃型における特徴は以下のようになります.
- ポジポジ刃型では,T.R.を大きくできるため,切れ味が良いです.
- ネガポジ刃型では,アプローチ角がある場合,I.A.を大きくできるため,切りくず排出性が高いです.
- ポジネガ刃型では,特に良いところがなく,I.A.が非常に小さくなります.
- ネガネガ刃型では,切れ刃には特徴が出ないが,チップ取り付けの関係で,両面式チップを切れ刃として取り付けることができます.
切削加工関連の本を読んでいても,ポジネガ以外の3つに関して記述があっても,ポジネガには一切触れていない本が多いです.
また,上式はあくまで「カッタボディの持つ」半径方向すくい角と軸方向すくい角から,T.R.とI.A.を計算する方法です.
本当の意味の切れ味や切りくず排出性に影響する角度を得たい場合は,チップ自身が持つ半径方向すくい角と軸方向すくい角を上記計算結果に足す必要があります.